決断疲れ
ー 社会や人生が複雑になり、決断を迫られることが非常に多いのが現代です。
行動力は大事ですが、疲れてしまうデメリットもあります。
あたかも、行動力が重要という価値観が広まっていると感じますが、アクセルを踏みっぱなしでも疲れてしまいますよね。
ではどう考えたら良いのか?
哲学を勉強していて、そのヒントがあると思ったので、紹介したいと思います。
行動に関する哲学を学ぶことで、他人に振り回されない為の知識もゲットすることができるのです。
今回、こんな方向けの記事になります。
- 行動や決断の基準を知りたい
- 決断疲れを減らしたい
- 他人軸ではなく自分軸で生きていきたい
今回は、イギリスの哲学者ジョン・ロック(1632 – 1704)の経験論を参考に、決断疲れをしない生き方について見ていきたいと思います。
【5分で読める経験論】人間は経験によってのみ成長する
経験論を一言でいうと、人間は経験によってのみ、知識を蓄えて成長できる。
という考え方です。
当たり前といえばそうですが、深い意味があります。
要点を先に言うと「人は経験によって身についた知恵で、生きやすくなれる」と言うことです。
彼によれば、人間の頭は白紙の状態(知識がない状態)で生まれてくるそうです。
より過去の哲学者は人間は思考する能力も備わっている、と主張していましたが彼はそれに反論しています。
そして、
知識を積むためには経験が必要で、経験を積むための『システム』だけが、生まれつき人間に備わっているというのです。
経験を積むシステム ー それは「快」か「不快」かの感情です。
その証拠に、生まれたばかりの赤ん坊は、不快な時には泣き、心地よいときには安らかな表情をします。
人間の行動原理は、「快」か「不快」の感情であり、特に「不快」を解決するために行動するというのです。
不快の感情が動機で行動が促され、行動により経験が生まれ、経験によって知識が蓄積される。ー このプロセスにより『心の平穏と豊かな人生』が実現すると言っています。
よく、「百聞は一見に如かず。百見は一験に如かず」と言われますが、これもロックの経験論を言い換えた言葉といえるでしょう。
未経験のことを本で学ぶだけでは、自分の感性(「快」と「不快」に大別される)は動きにくいからです。
実体験が必要な理由は、感性が働かないことには物事の判断基準は身につきにくいからなのです。
例えば、人間関係において自分が「不快」と感じる相手との関わりを経験するとします。
不愉快な経験により、「人との相性」や「相手の性格の問題」などの知識を得ることができます。
さらにその知識が、対人関係の見直しや豊かな人間関係を作る事にもに役立てられるでしょう。
あらゆる知識は実体験に基づき、そこから得られた教訓が人間を賢くするということです。
彼の主張を元にすれば、
人間の行動原理は「快い状態になりたい」なのだから、それに従えば人生はよくなると言えると思います。
以下、ロックの経験論の引用です。
意思を決定するものは、一般に想定されているように、より大きな善の希求ではなく、人間が現在置かれているある落ち着かなさ(しかも大部分はもっと差し迫った落ち着かなさ)なのである。
ジョン・ロック 人間知性論
これが、意識を次々に決定して、私たちを行動へと導くのである。この落ち着かなさは、欲望と呼ばれてよい。欲望とは、善が欠けているためにおこる心の落ち着かなさである。
現代社会は、行動を煽るものが多くて疲れる
ではロックの経験論をもとに、現代社会での『決断疲れ』をどう考えたら良いかというテーマで見ていきたいと思います。
現代を生きていると、いたずらに行動や決断を煽る情報があふれていると感じます。
例えばビジネス本やインフルエンサーの情報発信。
「〇〇をしないとヤバい」「今すぐ行動しろ」「このままじゃダメだよ」「◇◇や××もできないと大変だよ」などなど…
積極性は人生に必要だと思いますが、あまりにも行動を煽る情報が多いですよね。
現代に生きる我々が1日に接する情報量は、平安時代の人達の一生分、江戸時代の人達の一年分とも言われています。*3)
ロックの哲学は、こういう悩ましい状況に対しても一つの答えを出しています。
行動は「不快」を解決し、心に平穏をもたらすためのもの。
行動は自分の『心の平穏』を得るためのものであって、他人に感化されるものではないともいえるでしょう。
でも、たくさん行動した方が有利じゃない?
もちろん「行動」を否定する訳ではありません。
現代社会は複雑ですし、必要な知識や行動量は明かに増えています。
資本主義社会である以上、行動力が人生に有利に働くことは否めないでしょう。
だからこそ、行動に哲学が必要なのだと。
行動や決断が必要な時に「それは自分の不快を解決できるものなのか」という基準で考えてみる。
そうすることで、自分にプラスに働く決断ができてくると思います。
沢山の情報に惑わされて、「何か行動しなくては」と漠然と思ったその時に必要な知識だと思います。
自分の中で、「不快なことは何か」それをすることで「快い状態が手に入るか」と自問してみることで、正直な気持ちが見えてくると思います。
自分の感性を基準にすれば、「他人軸」ではなく「自分軸」での行動が可能になります。
直感で決めるとも少し違う気がします。
自分の「快」「不快」という、より具体的な基準で決めていくという感覚です。
また別な角度で考えてみると、
他人に急かされて経験をした所で、人生が安泰になる保証があるとも言い切れないと思います。
将来どうなるかは分かりませんからね。
本来経験というのは自分の人生を豊かにするもの。
将来の為に今を犠牲にするのではなく、将来への希望を持ちながら今も楽しむ。
というのが一番幸福な気がします。
参考文献・リンク
*1) [ジョン・ロック] 人間知性論
https://www.amazon.co.jp/%E4%BA%BA%E9%96%93%E7%9F%A5%E6%80%A7%E8%AB%96-1-%E5%B2%A9%E6%B3%A2%E6%96%87%E5%BA%AB-%E7%99%BD-7-1/dp/4003400712
*2) [NHKブックス] 快楽の哲学―より豊かに生きるために
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784140911662
*3) [事業構想 PROJECT DESIGN ONLINE] 一流企業でなぜイノベーションが起きないか 革新を阻む壁の正体
https://www.projectdesign.jp/202012/creation-future-business/008617.php
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